8月29日のミサイル発射についてはこちら
7月28日深夜北朝鮮がミサイルの発射を断行しました。
そこで今回はおそばせながら、今回のミサイルの情報、そして発射をめぐる各国の動きなどについて見ていこうと思います。
異例の深夜の発射
北朝鮮は28日の23時40分頃にミサイルを発射しました。
朝鮮戦争停戦日の27日周辺を巡ってミサイルが発射されるであろうという憶測が出ていましたから、発射自体は半ば予想通りです。
しかし、発射時刻は今までとは違って、深夜の発射ということになりました。
従来は午前中の発射が多かったですからね。
何時でも発射できるという技術の誇示とともに、予想されていないであろう深夜の発射を巡って、アメリカ、韓国、日本がどういった反応をするのかを知る狙いもあったでしょう。
今回のミサイルの情報
今回のミサイルは高度3700キロに達し、47分間飛行したとされています。
通常軌道で発射された場合には9000から1万キロに達すると分析されています。
ミサイルの種類は前回と同じく「火星14」で飛行距離から4日に引き続き2度目のICBMの発射となります。
4日のICBM発射実験と比べて、到達高度は900キロ以上、飛行時間は7分以上伸びていることからも、北朝鮮のミサイル技術が着々と進歩してしまっていることは明らかです。
さらに通常軌道でのミサイル発射でも2500キロ以上飛距離が伸びるであろうという観測も出ています。
今回の技術の向上によって、シカゴ、ロサンゼルスといったアメリカの主要な都市も射程に入る可能性があり、アメリカにとっての北朝鮮の脅威は着々と増していることとなります。
発射場所
さらに今回のミサイルの発射場所は今までにミサイル発射を行ったことがない、舞坪里(ムピョンリ)からの発射であることも判明しています。
このことは、先ほど述べた時間の話と合わせて、どこからでもいつでもミサイルを発射することができるぞという北朝鮮からの強いメッセージに他なりません。
さらに舞坪里は山岳地帯で地下坑道に軍事基地を隠しやすい立地となっています。
さらには中国と近い場所で、アメリカが先制攻撃を中国との関係を考えてしづらい場所であるということも特徴です。
動けないアメリカ
今回の発射を受けて、米日韓は許容できない旨のコメントを発表しています。
今回の発射はICBMでアメリカを射程に収めることのできる飛距離となっており、アメリカに対する大いなる挑発行為です。
北朝鮮が今回4日に引き続いてICBMの発射実験を行ったのも、4日の発射でアメリカから何らかの軍事的な反応は見られなかったことが大きいでしょう。
というのも、4日以前はアメリカのレッドライン、つまりこれ以上やるとアメリカは許さないぞというラインは、核実験そしてICBMの発射だと言われてきました。
アメリカとしても本土に届きかねないICBMの開発を許容することはできませんからね。
北朝鮮としても4日以前は、アメリカそしてアメリカから北に対する制裁を要求されている中国に対する配慮もあってか核実験、そしてICBMの発射実験には踏み込んできませんでした。
しかしながら、4日にICBMの発射に踏み込み、これまでレッドラインとされていたラインを超えてみたけども、アメリカからは何も軍事的反応はなかったわけです。
そうなると、北朝鮮からしてみれば、ICBMの発射ではアメリカは動けないぞと見透かされ、2回目の発射実験、それも性能を大きく向上させたものということになりました。
つまり、アメリカが北からの報復を恐れて、特に韓国に対する報復を考えて軍事的行動に踏み切れないことが北朝鮮を助長させる結果となっています。
今後もICBMの発射実験を続けることになるでしょう。
次は日本を飛び越えて太平洋に向けての発射になるかもしれません。
そして、ゆくゆくはワシントンに届く性能になり実戦配備されてしまう。
この前に何としても防がなければならないわけですが、アメリカとしてもイマイチ効果的な行動は起こせない状況が続いています。
(参考)
北朝鮮の特別重大報道「ICBM発射実験に初成功」今までとはレベルの違う北朝鮮の挑発 問われるアメリカの対応 - 桜咲き誇れ
恐れる中国
とはいえ、アメリカとしても北朝鮮がワシントンに核弾頭を届けるようになるまで、指をくわえて見ておくわけにはいきません。
となると、アメリカが毅然とした態度を示す意味で何らかの限定的な軍事行動に出るという可能性もなきにしもあらずです。
これを恐れているのが中国です。
中国では秋に中国共産党大会を控えており、習近平主席はここでスムーズに主席としての地位を引き続き確保したい考えです。
さらには党大会では最高指導部のメンバーが大幅に入れ替わることになります。
こうした非常に敏感な時に、アメリカが何らかの軍事的オプションを用いてしまえば、習主席にとっては外交上の失点ということになってしまいます。
さらに中国が恐れるのは北朝鮮の核実験でしょう。
北朝鮮がICBMで何も反応しないアメリカを見て、勢いよく核実験に臨むということも考えられないわけではありません。
そうなると、中国としても核実験は許容できないわけで、これまた習主席にとっての失点となります。
こうした意味からも、アメリカは北朝鮮に大きな影響力をもつ中国に対して石油の禁輸などの制裁を求めることになるでしょうが、北に対する日本の独自制裁を戒める発言を出している現在の習主席とすれば、制裁に積極的に加担するということは非常に考えにくいでしょう。
終わりに
北朝鮮としては、アメリカが何らかの行動に出ない限りは、増長して実験をやり続けることでしょう。
しかしそれを許すことはできないアメリカ、このせめぎ合いがどうなることか今後も注視する必要があるでしょう。
さらに北朝鮮に実験をやめさせる上で、経済面などで大きな役割を占めるのが中国、ロシアです。
しかしながら、この2国は対話による解決を目指すというスタンスでどれまで効果があるのかは不明です。
この2国に対していかにして北朝鮮に対する影響力を発揮させるかということも非常に重要な課題となるでしょう。
日本としては、稲田防衛大臣が辞任した翌日のミサイル発射となり、岸田大臣が防衛省と外務省を行き来するなど非常に苦労している状況も見受けられます。
さらには、今回のミサイルは視認できるほどの距離に落下したということも重大な問題です。
こうした緊迫したアジア情勢の中で、防衛を巡って内政でゴタゴタしている余裕はありません。
一刻も早い解決、そして次の大臣の強いリーダーシップによって、万全の体制を敷けるように期待したいところです。
さらには、日本の防衛はこのままで大丈夫なのか、策源地攻撃能力の問題などなど課題は山積していることでしょう。
政府、そして与党野党ともに、この重大な問題に取り組む姿勢を期待しています。
前回のミサイル発射実験
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*1:文春新書