北朝鮮のミサイル開発、6度目の核実験を受けて、国連安保理で北朝鮮に対する制裁決議が全会一致で採択されました。
今回は、その内容、その効果、各国の反応などについて見ていきたいと思います。
制裁決議の内容
今回の制裁決議の内容は
- 原油の輸出を現状レベルに制限
- 石油精製品を年間200万バレルに輸出制限
- 天然ガス液の禁輸
- 繊維製品の禁輸
- 北朝鮮労働者の雇用禁止
といった内容になりました。
アメリカの譲歩
アメリカが示していた原案では、原油や石油精製品も禁輸というものでしたが、ロシア・中国に配慮する形で、また短期間での採決を目指すためにアメリカが譲歩した結果になりました。
一方その結果で、9日間という短期間での制裁決議の採択、なおかつ全会一致での決議ができたということは非常にポジティブな結果といえるでしょう。
中・露賛成の思惑
このように、アメリカの譲歩によって中国ロシアは制裁決議に対して、賛成しました。
これには、中国ロシアも北朝鮮の核保有を認めるものではないという姿勢を示すと同時に、制裁決議を批判することで、アメリカが独自の行動にでないようにする意味もあるでしょう。
制裁決議の採択が順調に行われず、アメリカが国連での北朝鮮への制裁という場を離れれば、すなわち北朝鮮に対する軍事行動の確率が飛躍的に高まることは言うまでもありません。
そして、中露は、核開発は許容せずとも、アメリカの軍事行動によって北朝鮮の体制が崩壊することは望んでいません。
こういった思惑も含めての、全会一致という結果になりました。
制裁決議の効果
上述ののように、アメリカが示していた非常に激しい原案に比べれば、物足りない内容とはなりました。
しかしながら、譲歩したとは言っても、前回の過去最大の制裁決議でも盛り込まれなかった原油の輸出に関しての制限を盛り込めたということは、重大な意味があることはまちがいないでしょう。
米国の試算によれば、原油・石油精製品の輸入は3割減という効果があるとされています。*1
そして、今回の制裁決議の中で繊維製品の禁輸は、年間7億6千万ドルにも登ると言われる、北朝鮮の主力の外貨獲得手段を制限するという意味では、効果が見られる可能性もあるでしょう。*2
米国のヘイリー国連大使は、これによって北朝鮮の輸出額の9割以上が禁輸対象になったと、今回の制裁の意義を強調しました。
さらに、9回連続での制裁決議の全会一致ということになり、ロシア中国も含めて、国際社会が北朝鮮の行動を許容しないという一致した姿勢を示したとも言えるでしょう。
このように、一定の効果は期待できるものの、譲歩したことで、北朝鮮に決定的な打撃を与えるとまではいかないというのもまた現実です。
各国の反応
この制裁決議を受けて、日本では、安倍内閣総理大臣が国際社会の姿勢を明確に示したもので、なおかつ全会一致で迅速に行われたことを高く評価するとのコメントを発表しました。*3
そして、北朝鮮に対する 大きな影響力を持つ中国は、北朝鮮に安保理決議を遵守し、核ミサイル開発を進めないように求める一方で、アメリカに軍事行動をとらないように、各国に冷静さを保つようにけん制しました。
アメリカのヘンリー国連大使は、核開発を停止することに同意するのなら未来を取り戻せることができる、として、北朝鮮の核ミサイル開発の断念によって北朝鮮の未来が開かれることを強調しました。*4
最後に
以上の通り、制裁決議は採択され、一定の効果は見込まれるとはいえ、やはり手詰まり感は否めません。
そして、北朝鮮が今回の制裁決議を受けて、ミサイルの発射などの挑発行為に出る可能性も大いに考えられます。
国際社会が連携して、北朝鮮の行動がプラスではないことを 思い知らせることと同時に、日本としても独自の制裁、あるいは防衛の万全の体制を整えることが不可欠です。
前回の制裁決議
北朝鮮に対する制裁の意味、対話のための対話の無意味さについて
Jアラートがなったらどうしたらいいか