民進党両院議員総会で、事実上の民進党の解党、希望の党への合流が決定しました。
前原代表は、全ての候補の公認を取り付けることを目指しているようですが、希望の党側の発言を聞く限り、平和安全法制や憲法改正に関して賛同しない方は、ご遠慮いただくといった形です。
いずれにせよ、民進党の影響力は皆無で、小池代表の言うことを全て受け入れるしか、もはや道はないのでしょう。
民進党の前原代表は、「名を捨てて、実を取る」として、安倍政権を止めるためにはなんでもするという言葉の通り、野党第一党としての矜持などはかなぐり捨てて、小池百合子代表の軍門に下ったわけです。
しかし、民進党が目指した道は正しかったのか、ただの選挙目当ての行動ではないのか、手段と目的の逆転、政策と理念の一致といった観点から論じて参りたいと思います。
民進党の目的
そもそも、民進党が安倍政権を何としても倒すと言い出したのは、共産党と共闘し始めたあたり、すなわち平和安全法制の成立あたりからでしょう。
与党の横暴な強行採決や、その憲法の範囲内かわからない内容に対し、市民と野党との共闘と称して、平和安全法制を廃止して憲法違反の疑いを脱し、さらには安倍政権による憲法改悪に反対するということが目的でした。
その目的を達するために、安倍政権を倒そうと決意し、その目的のために、共産党との共闘という禁断の果実に手を出したはずです。
手段と目的が逆転
このように最初は、目的があって、安倍政権を倒すといったことを掲げていたはずが、現在では、「安倍を倒す」ということが目的となりつつありました。
これは、右から左までごちゃまぜの民進党をつなぐ唯一の一致点を作るという意味では仕方がなかったのかもしれませんが、明らかに歪んでいることは間違いありませんでした。
ここまで読めばわかる通り、目的と手段が逆転してしまっています。
本来「手段」であったはずの「安倍を倒すこと」が「目的」となってしまっていました。
そのことは、今回の希望の党への合流を見ても明らかです。
大同が小異に
そして今回は、いつのまにか目的となってしまった、「安倍を倒す」ために、小異を捨てて大同団結するという道を選んだわけです。
本来、平和安全法制や憲法改悪への反対こそが大同であったはずが、いつのまにか小異となっているのが現状でしょう。
希望の党は、「憲法改正」「平和安全法制を認める」ということを、合流する人に対する最低条件として求めています。
となれば、本来安倍政権を倒す理由・目的として存在した大きな二つの軸を捨ててしまっているという、おかしな状況になってしまっていることが分かるでしょう。
民進党議員が、今回の合流を受けて「安倍政権を倒すという大きな目的のための合流ということで理解する。」という発言が多くみられるのも、このことを如実に表しているでしょう。
目的が「反安倍」の集団に政権を任せられるのか
仮に前原氏のいう通り民進党丸ごとの合流ということになれば、希望の党は「安倍政権を倒す」が目的でしかない党、すなわち民進党のカーボンコピーになることは間違い無いでしょう。
そうなれば、仮に政権を獲得した際に、方針を巡って、亀裂をもたらすことは間違いありません。
目的が「安倍政権を倒す」という集団が、安倍政権を倒した後は、その役目を終えてしまいます。
まさに、2009年に威勢良く、反自民を唱えて、自民党政権を倒すという一致した目的を失った結果、党内もしくは閣内の左右の一致が得られずに、方針を失い混迷した民主党政権の二の舞になることは間違い無いでしょう。
外交・安全保障、憲法での一致は不可欠
私は安倍政権支持者ですが、批判の受け皿となり、緊張感を作り出す、野党の存在が不可欠であるとも考えます。
その上で、その野党は30年くらいの長いスパンで続く政党になっていただきたく思います。
そして、長く続く政党を作り上げるためには、大きな政策の一致は不可欠です。
民進党の最大の失敗、政権担当能力が欠如しバラバラだった原因は、外交安全保障での不一致、国家の行く末の不一致にあると思います。
軽視するわけではありませんが、内政に関しては、その都度に激しい議論があってもいいと思います。
しかしながら、外交安全保障・国家の行く末に関しては、埋められない壁があるのも事実でしょう。
ですから、あらかじめ大きな部分では一致しておかなければ、政権を担いうる、そして長期的スパンに立った政党運営は厳しくなることは間違いありません。
理念・政策で集まれ!
そういった意味で、今回の希望の党が、外交安全保障、そして憲法改正で一致することを、大きな旗印としてかかげていること、それ自体は評価したく思います。
その上で、それが口だけのものにならないように、厳格に守られることを願いたいと思います。
そして、民進党のリベラル派と呼ばれる議員たちも少なくは無く、十分政党要件を満たすでしょうから、その団体で集まっていただきたく思います。
自らの主張を曲げて、平和安全法制賛成、憲法改正賛成を飲み込んで希望の党に入党されることは、目の前の選挙のためには効果的かもしれませんが、将来を見通した上では、ご自身のためにも、国家のためにもならないことは明らかです。
何より、昨日まで平和安全法制反対を声高らかに掲げてきた人が、選挙のために、やっぱり賛成と移り変わることが、プラスかマイナスということは、論を待ちません。
終わりに
今回の希望の党には、小池都知事の無責任さや実効性への懐疑から賛成はできません。
しかし、現実的な安全保障や憲法改正という、理念が一致した集団が生まれること自体は歓迎したく思います。
民進党で冷遇されてきた、渡辺周さんなどの保守派の議員からしてみても、本来の自分の理念を訴えることのできる政党で仕事ができることは喜ばしいのでは無いでしょうか。
そして、リベラルな先生方に置かれても、安全保障法制は違憲・憲法改正反対といった自らの理念をもつ集団で集まっていただきたく思います。
安倍アンチの方々からとっても、非常にわかりやすいことは間違い無いでしょう。
それこそが、20年後の日本にとってプラスなことであると信じています。
今逢坂議員が無所属で立候補されるとの報道がありましたが、私としては自らの意思を曲げずに信念を貫こうとされる、その姿勢を素直に尊敬したいと思います。
辻元清美氏や阿部知子氏と中山成彬氏や小池百合子氏が同じ党にいる状況なんて誰もみたくはありません。
先生方の心ある決断を望みます。