北朝鮮の脅威が増す中、日本をはじめとして国際社会は、圧力を高める方向に向かっています。
そういった状況の中で、日本政府からよく出る言葉が「対話の選択肢を捨てているわけではないが、対話のための対話では意味がない。今は圧力をかける時。」といった趣旨の発言でしょう。
これをパッと見ると、対話のための対話はなんでだめなの?対話の選択肢を捨てていないのに圧力をかけるってどういう意味と思われる方もおられるかもしれません。
そこで今回は、対話のための対話では意味がない理由、制裁による圧力の限界、今後の展望などについて見ていこうかと思います。
対話のための対話
対話のための対話というのは、その名の通りなのですが、対話をする目的で対話の場を設けようとすることです。
具体的に言えば、北朝鮮との対話を日米韓の側から働きかけるということになります。
対話のための対話の問題点
この「対話のための対話」の問題点は、対話を求めるのは日米韓の側ですから、北朝鮮に対話するということを飲んでもらうために、北朝鮮が出す条件を飲む必要があります。
ここでいう、北朝鮮が出す条件というのは、北の核を認めるということ、もう少しレベルを下げれたとしても、ICBM・核開発の凍結ぐらいまでしか飲まないでしょう。
つまりは、対話のための対話を行うということは、すなわち北朝鮮による核の放棄を諦めるということに他なりません。
これは、暴力的手段によって相手に威嚇をし、その存在を認めさせるという、反社会的組織の行っている行動と違いはなく、それを認めるわけにはいきません。
これを認めれば、今後威嚇したものがちとなり、国際秩序が揺らぎ兼ねません。
さらに言えば、対話のための対話をすべきだと訴える方たちのなかには、日本が核兵器禁止条約に参加すべきだと訴える方も多いですが、これらは相反する考えに他なりません。
過去の裏切り
そして、対話のための対話のさらなる問題点は、対話によってICBMの放棄や凍結によって、アメリカに対する脅威を捨てさせ、軍事的均衡を保つということで、約束したとしても、北朝鮮がそれを守るとは限らないということにあります。
北朝鮮はこれまでに、1994年のカーター元大統領の訪朝による核不拡散条約加盟、六者協議による核施設の無力化の合意をはじめとして、何度も対話のテーブルについてきました。
しかし、北朝鮮はこれらの対話による解決をことごとく無視し、結果として残ったのは、対話の見返りとして供与した物資や財産による、ミサイル・核開発の促進だけでした。
これらの過去の教訓から学ぶべきことは、北朝鮮に対して対話のための対話で条件を交渉し、凍結などの約束をしても、それを守らず結果として時間稼ぎにしかならないということでしょう。
圧力による対話
そこで現在、日米韓を始めとして、国連・国際社会が行っているのが、北朝鮮に対する制裁を行うことです。
これによる、北朝鮮が、これ以上ミサイル・核開発を続行することはできないと判断して、北朝鮮側から対話のテーブルを要求してくることを目指しているわけです。
これであれば、対話を求めている北朝鮮に対して、核の放棄などを通じた話し合いができる可能性も開かれるわけです。
よく現在の日本政府の対応を、対話をしようとしないと批判する方達もいますが、河野外務大臣も何度も言っていますが、対話を真っ向的に拒否しているわけではなく、北朝鮮が対話の姿勢を示せば、それに応じる用意はあるということです。
こちらから対話のための対話を持ち出さないということと、対話をしないということは全く次元の異なる話です。
ですから、日米韓は今は圧力の時であるとの姿勢で一致しているわけです。
圧力の限界
しかしながら、中露の反対も含めて、制裁には限界もあり、必ずしも北朝鮮に対して有効な打撃を与えられているかは不透明です。
さらには、ロシアのプーチン大統領が言うように北朝鮮は雑草を食べてもミサイル開発をやめず、対話の場には現れないというのは、一定の説得力はあるでしょう。
これは、北朝鮮はリビアなどの例を見て、核を放棄したら国が滅びるということを学んでおり、アメリカに届くミサイルを完成させることが、北朝鮮の国体維持につながるという姿勢で挑んでいるからに他なりません。
そして、そんな北朝鮮の政策は正しい面もあり、本来であれば、制裁を無視し続け得る国に対しては、アメリカが軍事介入するわけですが、韓国・日本に対する報復を恐れて、軍事的解決も出来ません。
仮に石油の禁輸による制裁で合意することができれば、北朝鮮に対して今までとはレベルの異なる影響を与えられるため、ミサイル開発ができなくなり、対話の場に引きづり出せる可能性はあります。
しかしながら、特にロシアが石油の禁輸に後ろ向きであることから、11日の制裁決議の採択で、禁輸が盛り込むことは、非常に難しいと言わざるをえません。
今後の展望
ということで、今後、石油の禁輸などのさらに厳しい制裁が決定されれば、状況が変わる可能性はありますが、対話のための対話も認められないし、制裁による圧力による対話も手詰まり状態であるという状況に現在あります。
しかし現状では、このままズルズルいく未来として、
- 北の核を認める
- 軍事的衝突
の2パターンが考えられるでしょう。
北の核を認める
まず、北の核を認めるということですが、これは日本・韓国としては絶対に認められません。
東アジアの軍事的均衡が崩れるということはもちろん、相対的に力をますことになる北朝鮮に対して、今後交渉のチャンスは、日本と韓国には訪れなくなります。
これによって一番危惧されるのは、日本では拉致問題でしょう。
一方アメリカでは、本土に届くICBMの開発さえ辞めさせれば、核の保有を認めるしかないのではという論も出始めています。
しかしながら、北朝鮮の核を認めるということは、韓国が核保有を真剣に検討し始めるということになりかねませんし、核を開発すれば最終的に認められるということで、核不拡散体制が崩壊し、核が世界中に広がることになりかねません。
軍事的衝突
そうなると、最終的に考えられるのはアメリカによる軍事的介入となります。
しかしながら、現在のアメリカの状態、また攻撃による同盟国に対する報復を考えれば、非常に考えにくいというのが現実です。
ただその一方で、バノン氏の更迭やマティス国防長官の発言の変わりようなどを見るに、完全に安心することはできません。
さらには、トランプ大統領の支持率が低下していけば、国内の一致結束を高めるという意味で、戦争という手段をとるということも考えられないわけではありません。
日本・韓国からすれば、軍事的衝突は出来る限り避けたいというところですが、可能性としてはありうるかもしれません。
終わりに
ということで、北朝鮮を巡る対応について見てきましたが、はっきり言って手詰まり感は否めず、北朝鮮のペースで進んでいることは間違いありません。
とはいえ、日本の立場として、現実問題として、対話のための対話を求めることは不可能でありますから、今後の国際社会と強調して制裁を強めていくほかないというのが、現実です。
11日に国連の制裁決議による採択が行われます。
これについて、中国が認めるという方向に方針を転換している発言が、王外相から出ていました。
もし仮に石油の禁輸が認められれば、手詰まりの現状から状況が大きく変わることもありえますが、ロシアの態度を考えれば非常に難しいと予測せざるをえません。
いずれにせよ、緊張が高まる中、11日の制裁決議の内容に注目が集まります。