永田町で急に解散風が吹き始めました。
本日ニューヨークに向かった安倍総理大臣も、搭乗前の記者の質問に対して、「解散に関しては、帰国後に考える」と発言されました。
通常、解散に関しては、全く考えていない、白紙だと答えることが多い安倍総理大臣のこの発言からしても、解散は相当現実的なものであることが伺えます。
なにより、これだけ風が吹いてから解散しないということは相当考えにくいでしょう。
安倍総理・総裁がこのタイミングで、解散という伝家の宝刀を抜くからには当然勝てるという思いがあるわけです。
そこで、今回は、大義云々の話は別にして、政府・自民党がこのタイミングで解散を切る、すなわち今なら勝てると判断する理由について、できるだけ簡単に見ておきたいと思います。
内閣支持率・政党支持率の回復
まずは何と言っても、安倍内閣・自民党に対する支持率の回復でしょう。
本日の産経新聞の調査では、支持率が50パーセントを回復し、これは5月以来の高い水準です。
その他、各紙調査でも軒並み内閣支持率は回復し続けています。
この要因が、安倍総理の謙虚風の態度なのか、他党の失態なのか、安全保障の緊張の高まりなのかは、さておくとして、4ヶ月ぶりの50%というのは、解散を切るという冒険を後押しする結果になるでしょう。
民進党の惨状
次には民進党・前原執行部の最悪の船出でしょう。
離党ドミノ
まずは離党ドミノでしょう。
今年に入って、長島議員、細野議員など民進党の保守系議員が、続々と離党しています。
民主党政権の終盤の小沢・反小沢で分裂した「バラバラ」の民主党に対して、今なおアレルギーが強い国民が多い状況で、離党が続く現状は、まとまりきれていない印象を与え、民進党から支持が離れるおおきな要因の一つでしょう。
山尾不倫
そして、何より大きいのは山尾議員の不倫スキャンダルでしょう。
前原執行部の船出の日に、不倫スキャンダルが報じられたことは、民進党にとって大きな痛手となりました。
個人的には不倫などどうでもいいのですが、今の不倫を許容しない社会状況、過去に不倫した議員を痛烈に批判していた過去、母親を売りにしていたところ、などから山尾議員に対する、世間からの嫌悪感というのは、大きなものがあるでしょう。
当然民進党に対するイメージダウンも避けられません。
ボロボロの民進党
このような、離党ドミノ・山尾不倫を受けて、民進党の支持率は、代表が交代して本来ならば、上がってもいいはずが、下がり続けています。
直近の時事通信社の世論調査では、公明党に政党支持率を抜かれるという状況です。
このように、野党第一党である民進党がボロボロの状況で解散を打つことで、民進党が受け皿になれず、消極的支持層、無党派層も自民党に投票することが期待できることも大きな理由でしょう。
若狭新党の準備不足
そして、民進党の他の受け皿になりうるであろう、若狭新党の準備がまだまだであり、このタイミングであればまともに戦えないであろうことも大きな理由の一つであることはまちがいないでしょう。
若狭氏が開催している政治塾は、先日第一回目の授業を終えたばかりです。
若狭氏は、予定を早めて、受講生の中から擁立したいと話しますが、政治塾を一度受けただけの人物を擁立して、支持を得られるかは不透明でしょう。
さらにはお金の問題もあります。
選挙に出るには、供託金と呼ばれる保証金が必要で、小選挙300万円比例200万円の合計500万円が一人当たりかかります。
50人擁立すれば2億5,000万円ですし、当然供託金以外にも莫大な金額がかかります。
その上、若狭新党は衆議院選挙までに政党交付金を受け取ることができず、膨大な資金を自ら用意しなければならず、選挙までの短い時間に準備を整えることは、非常に難しいでしょう。
小池氏の動向
さらに先日行われた、摂津市議会議員選挙に、若狭氏の応援する市民ファーストの会から4人が立候補しましたが、全員が落選しました。
このことだけで断ずるのはやや早計ですが、若狭氏に数多くの当選を勝ち取るだけの魅力がないことは明らかでしょう。
つまり、小池都知事がどこまで選挙に深く関わってくるかが非常に重要なわけですが、小池都知事が、豊洲移転やオリンピックなど数々の懸案を抱え、都政に専念すると宣言しているこの状況で、大規模な小池都知事の介入はないであろうことも、今のタイミングの解散の要因の一つでしょう。
ちなみに、小池都知事は10月21日から25日まで海外出張の予定が入っており、選挙戦終盤で応援に入れないなどの影響が出てくることが予測されます。
野党共闘の準備不足
そして、野党共闘に向けての準備不足感というのも大きな理由の一つでしょう。
民進党が、今後政権をとるための政党になるためには、共産党との共闘はやめるべきとは思いますが、短期的な目先の票・議席という意味では、一定の効果があることは事実でしょう。
与党としては、共闘はない方が楽であることはまちがいないでしょう。
しかしながら、民進党は野党共闘に批判的な前原氏が代表になったこと、さらに十分に協議が進んでいないことから、衆院選で共闘が行えるかは不透明な状況です。
さらに、前原代表としても、離党者が大きな理由としてあげる、「共産党との共闘」を行うことで、さらなる離党を呼びかねないことも、難しい判断にさせる要因の一つでしょう。
現に、18日、前原氏は共産党との共闘に否定的な見解を示しています。
前原氏「連立組めぬ」共産との選挙協力に否定的 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
このように、方針が固まっていない状況で、選挙に向けた体制ががっちり固まっていないということが、与党にとってのポジティブな要素であることも事実でしょう。
北朝鮮の動向
勝てるかどうかという話とはそれますが、北朝鮮の動向も解散の要因の一つではないかとされています。
北朝鮮は、国会の制裁決議を受けても、止まらずにミサイル発射を続けています。
今後、北朝鮮情勢は長期化することは必至で、長期化してますます北朝鮮の状況が悪化する前に、解散するという考えもあるでしょう。
さらに、11月のトランプ大統領の来日で、仮に大きな方針の転換があった場合に、安定した安全保障への対策を行うために、来日前に政権基盤を固めておきたいということも重要な要因の一つでしょう。
最後に
ということで、
- 内閣支持率の回復
- 民進党の現状
- 若狭新党の現状
- 北の動向
が大きな理由であるとみられています。
たしかに、自民党にとってみれば、今は非常に好条件が揃っている状況であると言えるでしょう。
当然、北朝鮮の緊張が高まる中での解散、臨時国会を行わずに冒頭解散、ということは、大義がないと言って批判されることはまちがいないでしょう。
このような批判に対して国民がどのように反応するのか、ある意味、安倍総理にとって大きな賭けであることはまちがいありません。
現状では、消費税の使途や憲法改正を目玉とするとの情報も出ていますが、はっきりはしていません。
安倍総理大臣が、解散の記者会見で、どのような争点を掲げ、どのような大義を示すのかも非常に注目されます。
選挙の大義が必要か、解散権の問題については、別の記事で触れようかと思います。
(追記)
選挙の大義が必要か、党利党略などの野党の批判について、の記事はこちら
安倍総理が会見で語った解散の理由はこちら