昨日特別防衛監察が発表され、その結果を受けて、稲田防衛大臣、黒江事務次官、岡部陸幕長らが辞任しました。
詳細はこちらの記事で。
今回の隠蔽疑惑は、国会での虚偽答弁や現行法に違反するもので、処分はやむをえないものだったでしょう。
しかしそもそも日報の情報開示はすべきだろうか、防衛に関する情報開示のあり方など根本の問題について考えていきたいと思います。
誤解を防ぐために言っておきますが、これから述べることは今回の問題に関して遡及的に述べるものではなく、今後の改善策として述べるものです。
今回の日報隠蔽疑惑の話が情報開示請求の義務違反であることがどうこうということを述べて擁護などをする意図はありませんので誤解のないよう。
情報公開法
今回の日報のデータを巡る問題はフリージャーナリストの情報開示請求によるものから始まりました。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律は、国民の知る権利に寄与すべく平成11年に制定されました。
今の時代においては、行政の透明性が求められ、その過程の行政文書を公開する権利があるというのは結構なことでしょう。
防衛に関する情報
しかし、こと防衛省のデータに関してはどうでしょうか。
日報というのは日々の行動や状況について非常に細かく描写されているもので、当然それを全て繋ぎ合わせれば、インフォメーションからインテリジェンスになります。
つまり、日報を網羅することで、自衛隊の軍に関する情報がうかがい知れてしまう恐れがあるわけです。
しかも日報の開示要求があったのはPKOの作戦中のことであります。
現在の行われている作戦について、自衛隊がどういう活動をしているかについても披瀝してしまうことになりかねません。
現在行っている作戦の情報がわかってしまえば、当然危険にさらされてしまいます。
今回の日報の件をどうこう言うつもりはありません。
現在の法律では公開すべきなのですから。
しかし、今後改良の余地があるのではないでしょうか。
他省庁と違い防衛省自衛隊のデータは、自衛隊の生命、ひいては国民の生命にも密接に関わってきます。
他省庁と同じような情報公開請求の建てつけにするのではなく、防衛省自衛隊の情報開示請求に関しては、何らかの別の建てつけを用意するべきではないでしょうか。
日報にはありのままを
さらに、日報というのは、現場の自衛隊員が起こったこと、そして思ったことをありのまま描写することで、司令部が適切に指揮をする、そして今後の活動の教訓にするためのものです。
しかし、日報に「戦闘」というワードが入っているからどうなんだ、ということをまさにPKOで派遣されている最中に国会で取り上げられてしまえば、今後日報に書く際に、「戦闘」って思うけど書くのやめようかななどのなんらかの忖度が働かないという保証もありません。
防衛に関してありのままの情報を知るということは重要ですから、現場ではありのままを言える環境を作ることは必要不可欠です。
そういった意味でも、作戦中の情報開示請求というのは如何なものかと思わざるをえません。
「戦闘」
そして野党もわかってて質問しているのでしょうが、自衛隊員が「戦闘」と感じて日報で書いたとしても、それがPKO5原則上の「戦闘」を意味するかどうかは別の問題なわけです。
今回の戦闘というワードをめぐる問題について、いまいちよくわからんという方のために簡単にまとめておくと、PKOに自衛隊を派遣するためにはPKO5原則と言われる条件を満たさなければなりません。
その中に非戦闘地域という条件があり、日報に「戦闘」というワードがあるのであれば、5原則を満たしてないのだから派遣をやめるべきだということで野党が追及していたわけです。
ただPKO5原則でいう「戦闘」というワードは国または国に準ずる組織に該当しなければ、「戦闘」とは呼びません。これは法的な解釈の問題です。
しかし現場の隊員は、その現状を見てその隊員の感覚で「戦闘」だと思えば日報にありのまま書くわけです。
ですから、たとえ日報に「戦闘」というワードがあったからといって、それが法的な解釈における「戦闘」という意味かどうかというのは別問題なわけです。
稲田防衛大臣は9条云々とか言ってましたが、正直あの答弁は間違いです。
いずれにせよ、こういった言葉の綾をとるかのような質疑によって現場の隊員を困らせかねないような追及の仕方ということにも、一抹の疑問を覚えざるをえません。
隊員にはありのままを書ける環境を
ちょっとややこしい話になってしましました。
つまり、自衛隊員は思ったことをありのままに描く、隊員が「戦闘」だと思えばそのままに描く。
そしてそれに関する法的解釈については、上層部が行うわけです。
現場の隊員が、法解釈における「戦闘」ではないから書くのをやめようなどと思うことが、良いわけがありません。
それを日報に現場の隊員が戦闘と書いたからどうだと攻め立てるのであれば、現場の隊員が政治の分野を慮って日報を書くなどという悪しきことになってしまいかねません。
情報開示請求に対応するための労力
そして情報開示請求に対応するための労力に関しても問題があります。
防衛省・自衛隊で情報開示請求に対応するための人員の確保というのは行われていません。
ですから当然今いる人員でその要求に対応するわけです。
しかしながら、情報開示請求に対応するためには、隅から隅まで情報が存在しないか探し、それを防衛機密にあたるものを判断して黒塗りにするという作業を山のようにしなければなりません。
現在も情報開示請求が山のようにきているということです。
このことによって、防衛省の能力が情報開示請求に裂かれてしまうことは、現在の緊迫感をます安全保障環境にとって国益にかなうことなのでしょうか。
甚だ疑問です。
このことからも、何でもかんでも情報開示請求を防衛省にまで認めていいのだろうかということ、そして認めるにしても、それに値する人員なり部署なりを設けるべく国会で議論していただきたいところであります。
終わりに
ということで
- 防衛機密
- 隊員に与える影響
- 情報開示を行うための労力
などの観点から、現在の情報開示請求がどの省庁でも一律で行われている現状が正しいのかについて論じてきました。
見ていただければわかる通り、防衛省自衛隊というのは、他省庁とは一線を書くする存在です。
ですから情報開示請求に関しても、作戦終了後にするなどの何らかの配慮を図るべく法改正なり何なりを検討していただきたいところです。
国会で審議することは山ほどあります。
内政の一部分だけで時間を浪費するようなことはないようにお願いしたいところです。
そして、安全保障委員会、外交防衛委員会が行われ、稲田議員も出席される方向だという報道が出ていました。
この隠蔽に関する疑惑も当然のことながら、そもそも情報開示請求このままでいいのかということについても論じていただきたいと思います。
特別防衛監察について