本日、防衛省の日報問題をめぐる特別防衛監察の結果の公表が行われました。
そこで今回は特別防衛監察の結果で注目すべきポイントについてわかりやすく見ていきたいと思います。
そもそも日報問題がどういう経緯で問題になってるんだ?という方はこちらで今までの経緯をまとめていますのでよろしければ、こちらもご覧ください。
最後にもリンクを貼っています。
今までの経緯
一応今までの経緯を簡単に振り返っておきます。
今回の日報問題は、情報公開請求で求められた日報が廃棄されたとされ、不開示になった後、稲田防衛大臣の指導で統合幕僚監部で発見され2月7日に公開されました。
しかし、その後陸自にも存在することが判明しましたが、陸自にも存在したということを隠蔽したのではないかという疑惑です。
そしてその決定に稲田防衛大臣も関わっていたのではないかということが、今回の最大の問題といってもいいでしょう。
公開されている文書が他の部署にもあったことを公表するかどうかというのは、国民に対する情報公開という観点からすれば、そこまで大きな問題ではないかもしれません。
しかし、自衛隊の隠蔽体質を表しているとも言える事案ですし、稲田防衛大臣が関わっていたとすると、国会で虚偽答弁を行った疑いが濃厚になるため、その関与が重要視されてきました。
特別防衛監察の結果
特別防衛監察によると、情報開示請求に対して陸自の司令部が日報を公開しようとしなかったことは、義務違反に当たるとしました。
さらに情報公開請求を受けた後に、陸上幕僚部の幹部が保存されている日報の消去を指示しており、2回にわたって陸自内の日報のデータを消去していたことも明らかになったとし、これについても開示義務違反に当たるとしました。
その上で、陸自内にも日報のデータが存在していることを公表しないことを、最終的に決定したのは黒江防衛事務次官であると決定付けました。
黒江事務次官は、「統幕にあった日報を公開しているので、陸自にあったことを公表する必要はない」という方針を伝えたとのことです。
稲田防衛大臣の関与
そして最大の焦点とも言える稲田防衛大臣の関与についても特別防衛監察は触れています。
特別防衛監察によれば、日報データの存在は事務次官まで報告されてたが、管理状況が不明確であるため、大臣に報告する必要がない旨の判断がなされたとしています。
そのうえで、稲田防衛大臣に対して、幹部から日報の存在についての何らかの発言がなされたことは否定できないとしました。
書面による、正式な報告はなかったとされました。
そして、稲田防衛大臣が非公表について了承したかどうかについては、公表に関する何らかの是非の方針や非公表の了承が決定されたという事実はなかった、と認定されました。
まとめると、稲田防衛大臣に、日報が陸自にも存在したことが報告された可能性はあるが、それに関して何らかの方針、非公表を決定したという事実はなかった、というのが特区別防衛監察の決定だということです。
処分・辞任
これらを受けて、防衛省は黒江哲郎事務次官を停職4日、岡部俊哉陸上幕僚長を減給1カ月の10分の1などとする関係者の処分が発表されました。
さらにこれを受けて、黒江事務次官、岡部陸幕長の辞任が内閣で承認されたことも発表されました。
そして、稲田防衛大臣は、一ヶ月分の給与を返納することを発表しました。
さらにその上で、辞任をすることも発表されました。
これらの辞任についてはやむをえないでしょう。
黒江事務次官は判断をした責任、陸幕は隠蔽しようとした責任、稲田大臣は防衛省自衛隊を掌握しきれず、文民統制の観点から懸念される行動が様々出てきてしまった責任を取ることは当然でしょう。
内閣改造でしれっと交代というのは、どうなのかと思っていたので、辞任の決定は尊重したいと思います。
今後の防止策
これが大事なのですが、今後同じことを犯さないための防止策がどうなるかということです。
稲田防衛大臣は、今後日報に関するデータは、統幕の担当部署で一元で管理して、情報公開に対しても一元で対応するということとしています。
さらに日報の保存期間を10年間として、その後は国立公文書館に移管するということになりました。
このことについては素直に評価したいと思っています。
そもそもPKOを統括する統幕に文書が存在した時点で、国民に対する情報公開という観点では問題なかったわけで、情報公開請求に対してその都度その都度対応する対応から陸自に存在云々ということが問題化してしまったわけです。
そもそもの発端も、本来は統幕に求めるべき情報公開を陸幕に求めたことから始まっているわけですしね。
ですから、一元的に対応するように、そして10年間の保存という決定がなされたのは、非常に良かったと思います。
後任と総理発言
安倍総理大臣は、稲田防衛大臣の辞任に対して
「安全保障は一刻の空白も許されない。後任には岸田外務大臣に兼任させるようにした。」
と発言されました。
NSCそして2+2など、防衛大臣とも防衛分野でも連携されてきた、岸田さんが兼任というのは、現在の内閣ではもっとも適任かと思われます。
まとめ
ということで、今回の結果をまとめると
- 陸自内で日報のデータを消去する指示が出され、それに基づいて消去されたことは法律違反。
- 日報発見の大臣への報告の遅れ、対外的説明は不適切で、法律違反
- 最終的に判断した責任者は黒江防衛事務次官
- 稲田防衛大臣が隠蔽の了承、何らかの指示を出したことはない。
- 稲田防衛大臣が日報の存在を報告されたことは否定できない。
- 関連幹部に対する処分
- 事務次官、陸幕長、防衛大臣が辞任
- 岸田外務大臣が防衛大臣を兼任
こんなところでしょう。
ということで、稲田防衛大臣が今回の決定に関わっていないことは認定されたわけとなりました。
当然各種リーク文書などとの整合性に関して、今後野党は追及を強めていくこととなるでしょう。
しかし、リーク文書があたかも本当のものであるかのように語り、今回の特別防衛監察の結果が嘘だと断ずるかのような発言には納得できません。
今回の特別防衛監察は、検事も入って徹底的な調査が行われたことで、このことに関しては一定の信頼性はあると思います。
今後野党がこのことを追及していくことは結構ですが、憶測を断定的に発言することは控えていただきたいところです。
そして、稲田防衛大臣の辞任によって、予定されていた安全保障委員会、外交防衛委員会での稲田朋美議員の出席は不透明な状況となっています。
当然、稲田防衛大臣の時に行われたとことでありますから、野党の要求に自民党としても答えて、稲田さん後任の出席を認めなければ、稲田隠しのための辞任であるとの国民からの印象を受けることはまちがいないでしょう。
稲田氏が決定にかかわっていないということが正しいのであれば、堂々と対応していただきたいところです。
一方で国会議員を参考人で招致するというのはなかなかない事例ですので、そのことをめぐっても今後も与野党間の折衝が続くことになるでしょう。
今までの日報問題をめぐる経緯
日報問題を巡るそもそも論