最終更新日9月23日
元TBSワシントン支局長でジャーナリストの山口敬之さんに、性的暴行の被害を受けた女性が、不起訴処分を受けて、検察審査会に不服申し立てを行ったことを受けて、顔出しで会見を行い発表しました。
この映像をはじめ見たときすごく衝撃的でした。
なぜなら、レイプ被害を受けた女性が顔を出して会見するなんて日本では、通常考えられないことですからです。
性的被害を受けた女性は、警察に通報することを躊躇するほどの、深い傷を負うものですから、いわんや顔出しで会見なんてびっくりしました。
以下、今回この事件の概要と、女性がおこなった不服申立てについて、そしてネット上で飛び交う憶測に基づいて、彼女や政府の評価を下げる発言について述べたいと思います。
あらかじめ、言っておきますが、この記事は山口さん、詩織さん(被害を受けたとされる女性)どちらに肩入れするつもりもありませんし、この事件の真相について述べるものでもありません。
詩織さんが嘘をついているというつもりも一切ありませんし、どちらかというと詩織さんへの憶測の批判をたしなめるものかもしれません。
極力事実について羅列するものにし、種々の憶測が正しいのかについて検証します。
事件の概要と憶測
詩織さんが語る、事件の概要は以下の通りです。
詩織さんは2015年3月、当時TBSワシントン支局長だった山口氏に就職相談をしたところ、食事に誘われた。そして4月3日午後8時ごろ、都内の串焼き屋に入り、午後9時20分ごろ寿司屋に移ったが、そこで食事をしているところで記憶を失った。そして、痛みで目覚めた際、レイプされていることに気付いたという。
警察の捜査によって、タクシー運転手や、ホテルのベルボーイ、ホテルセキュリティーカメラ映像、下着から採取したDNA片の鑑定結果などの証拠が揃い、2015年6月にいったんは山口氏への逮捕状が発行された。しかし、捜査員からは逮捕直前、「上からの指示で、逮捕できなかった」と連絡があったという。
山口氏はその後、2015年8月26日に書類送検されたが、2016年7月22日に、嫌疑不十分で不起訴になった。詩織さんは納得がいかないとして、検察審査会に不服申立をした。
つまり、山口氏と食事に行って、目覚めたらレイプされていた。
そして、警察に行ってDNA片をはじめとする証拠が揃って、逮捕状が出たけれども、逮捕されず、捜査が警視庁に移された。
その後、警視庁によって書類送検されたが不起訴になった。
とまあこういう概要です。
これを受けて、山口さんは法に触れることは一切していないとfacebookでコメントを発表しています。
以下、疑問に思われるであろう点を整理していきたいと思います。
地元警察による捜査が警視庁に移された
まず最初に疑問となるのは、逮捕状が出たのに、警視庁に報告した結果逮捕を止められて、捜査が警視庁に移されてしまったということです。
これが、安倍総理と近い間柄の山口氏の逮捕に対して何らかの力が働いたのでは、という憶測が生まれているのが今回の事件でしょう。
ただこういったことは、めちゃくちゃ珍しいということでもなく、最初の警察署での捜査が十分でないと判断されて、警視庁に移されるということはあるそうです。
特に強姦という冤罪が多い事件において被疑者が著名人である場合、捜査が十分でないままに逮捕すれば、社会に大きな影響を与えることですし、さらに慎重に警視庁が捜査を行ったということは十分考えられるようです。
こういったことを知らなければ、何だかこのケースだけ特別に、最初の警察署の逮捕を不当に妨害したように感じますが、事実としては著しく珍しいというわけでもないようです。
ですから、山口さんが安倍総理と近い間柄であることから、逮捕されなかったというのは、あくまで憶測に過ぎないわけです。
警視庁に移されてより捜査を行ったのは、山口さんのジャーナリストという職業によるものという憶測も成り立つわけですから。
書類送検されて不起訴処分
そして、警視庁に捜査が移った後に、捜査が行われ書類送検が行われたが、検察によって不起訴という処分が下されたわけです。
このことも、警視庁が捜査に力を加えて、起訴できなくしたんではないかという憶測があるかと思います。
ただ、強姦事件の起訴率は、平成27年度犯罪白書によると、37.2パーセントしかないそうです。
つまり3件に2件は不起訴なわけです。
ですから、起訴されなかったことを受けて特段この捜査に力が働いたのではというのも、憶測の域をでないです。
この低い起訴率は、強姦という犯罪の性質上によるものが大きいと思われます。
強姦というのは、密室で行われるものですからどうしても証拠が被害女性からの一方的なものに限られ、冤罪を生む可能性が大いにあります。
推定無罪が原則の中で、強姦をしっかり起訴するには、非常に確固たる証拠がないと難しいことでしょう。
実際に、性交が行われたとしても、その意思や強制性を立証するのは非常に難しいことだと思います。
本当に被害に遭われている方にとっては、非常に不幸な話です。
この点も何とか改善する必要があるでしょう。
ただ、冤罪との天秤の測り方が大いに難しいのも理解せざるをえません。
検察審査会への不服申し立て
今回このことを受けて、詩織さんは検察審査会に不服申立てを行いました。
これは、検察の不起訴処分に対して不服がある場合に、起訴してほしいという人が行える手段です。
簡単に言いますと、検察審査会では、国民からランダムで選ばれた11人がもう一度審査して、8人が賛成したら起訴相当の判断をくだされ、その後もう一度審査され、そこでも8人以上の賛成があれば強制起訴されるわけです。
ミヤネ屋さんでわかりやすいフリップがありました。
つまり、検察が独占している、起訴の権利に民意を反映しようということです。
今回の件でも、詩織さんの一連の事件で起訴されないのは何らかの力が働いていておかしいんではという判断が、下されれば起訴されるということです。
今回の事件の真相はこの検察審査会で一定の結論が出されることになると思われます。
ただ、検察審査会を通って起訴されるのは0,01パーセントという非常に高い壁ですので、今回の件が起訴されるとしても、警察が明らかに不正なことをしてなければ難しいのかもしれません。
憶測で貶めるような発言をするな!!!
ここまでは、安倍政権の不当な力による憶測が、あくまで憶測に過ぎないことを論ずることが主だったかもしれません。
しかし、ここからが一番言いたいことで、今回の顔出し会見を受けて、ツイッター等で、特に安倍政権を支持する層から、詩織さんに対して憶測でのすごい批判の発言が目立ちます。
わたしも安倍政権支持ですが、今回のことはあんまりだろと思っています。
詩織さんの弁護士の裏に民進党の影がちらついたり、山口氏がテレビに頻繁に出演するようになってから今回の会見を行ったことや、詩織さんが共謀罪の前に刑法改正を審議してほしいと会見で主張したことを受けて、
これはあやしいな、美人局だな、野党の回し者だな
という憶測で詩織さんを貶める発言が目立ちます。
しかし、安倍政権が不当な力を持って山口氏を助けたというのと同様、こういった憶測で、さも詩織さんが何らかの政治的意図を持って今回の会見を行ったと断ずるのはあまりに不適切です。
もし野党による工作だとしても、詩織さんは利用されているだけということも十分にありうることです。
仮にそれを疑うにたる状況があるとしても、確固たる証拠がない以上、憶測で貶めるような発言をすべきでありません。
このレイプ被害が本当のことであったならば、この女性の勇気を踏みにじる、非常に卑劣極まりない行為になってしまいかねないからです。
まさにセカンドレイプになってしまいます。
これはもちろん反安倍層が、安倍に近い奴は警察権力も捻じ曲げれるといった主張をするのも同じく許せません。
こういった女性の性の問題について、政局に絡めて論じるのは言語道断です。
しかし、このことで安倍政権を憶測で批判するのが許せんといって、憶測で相手を批判するのでは本末転倒です。
反安倍も親安倍も、憶測に基づいて自分の主義主張に有利な憶測を論じるのは間違っています。
まとめ
ということで言いたいことは、どういった立場の人も、自分の立場に有利となる憶測に基づいて相手を批判するようなことは厳に慎むべきだということです。
検察審査会の結論が出るまでは静観すべきでしょう。
わたしも、日頃そうしたことをしているかもしれませんが、今回のことは女性の性の被害という非常にデリケートな問題が関わっていることもあり、あんまりだろうと思った次第です。
もちろん、憶測で安倍総理の不当な力が働いたんではと言っている人々もですが。
さらに山口さんは、一度不起訴処分を受けているわけですし諸々の諸条件を鑑みても、この事件に関して軽々に語るべきではないと思います。
こういった主張は、賛否両論あると思いますが、これは違うだろ等々ありましたら、ぜひコメントください。
右からも左からも批判されそうですが、、、、
(追記)
検察審査会の結果、当事件については不起訴の決定がなされました。
民間人で構成される、検察審査会で不起訴が決定されたということで、刑事事件においては、一定の結論が出たとも言えます。
この結果を受けて、山口氏が絶対に悪いとの前提に立ち、検察審査会を否定する発言も見受けられますが、検察審査会はランダムで選ばれた民間人であり、適正な審査の結果、証拠が不十分であると判断されたと解するのが当然でしょう。
詩織さんを貶めるのと同様、山口氏を絶対悪と設定し、検察審査会を糾弾するかのような発言には、眉をひそめる他ありません。
(追記終わり)
性犯罪についてということで、性犯罪に関する110年ぶりの刑法改正のポイントについてわかりやすくまとめました
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