8月17日に韓国のムン大統領が、記者会見で、徴用工の個人の請求権は消滅していないと述べて波紋を呼んでいます。
これは従来の韓国政府の政府見解を覆すものです。
この発言には、朝日新聞も含めて日本メディア、外務省から批判・抗議の声が集中しています。
日本メディアが一致した方向を向くことの珍しさはみなさんご存知でしょうから、このことからも、今回の発言の異様さが伺いしれるかと思います。
しかし、徴用工ってなんなの?今までの経緯は、などなどいまいちわからないという方も多いかと思います。
そこで、今回は、徴用工問題と、今までの経緯、今回の問題などについてわかりやすく解説していきたいと思います。
一応申し上げておきますが、今回の記事は嫌韓的趣旨を目的として記述しているわけではなく、あくまで今回の発言やその関連をめぐる話に関して論じているまでです。
ご了承ください。
徴用工とは
日本では戦時中に、国民徴用令などに基づいて、朝鮮人を日本などで動員・徴用しました。
この時に徴用されたのが、いわゆる「徴用工」と呼ばれる人たちです。
そして戦後、朝鮮はこれらの徴用が、強制的であったとして、「強制連行」を受けたとして、日本政府を批判し、その当時の給料などに関して、個人の請求権などについて問題となっていました。
いまでは、慰安婦像の横に徴用工の像を立てようとするなど、戦時中日本によって被害を受けた象徴として、朝鮮二カ国が主張するものの一つです。
解決への経緯
しかし、この徴用工の被害に関する問題に関しては、1965年の日韓基本条約日韓請求権並びに経済協力協定などによって、日本から
- 無償3億ドル
- 有償2億ドル
- 民間借款3億ドル
の計11億ドルに及ぶ資金提供を行うことなどによって、「完全かつ最終的に解決された」とされました。
当時の韓国の国家予算が3.5億ドル、日本の外貨準備高が18億ドルですから、その額の凄まじさが計り知れます。
これらの成果によって韓国は漢江の奇跡とも呼ばれる経済成長を成し遂げたわけです。
その後慰安婦はこの解決に含まれていなかったなどと韓国が批判をすることはあっても、韓国の歴代政権は徴用工問題に関しては、解決されたという日本の立場と歩調を合わせてきました。
2005年廬武鉉は徴用工の請求権問題は韓国政府が責任を負うべきとの公式見解を示していますし、その当時ムンジェイン氏は、大統領秘書官でしたし、この見解をまとめたメンバーでもあります。
ですから、慰安婦などは韓国が頑として異なった見解を示したとしても、徴用工問題に関しては、1965年に文言通り「完全かつ最終的に解決されている」というのが日韓両政府の共通した見解だったわけです。
韓国の裁判所
ところが、2012年に韓国の最高裁が、「個人の請求権は消滅していない」とする、政府見解も国際条約も無視した独自の見解を持ち出して、それ以降日本企業は請求権に関する訴訟で敗訴を続けています。
韓国の裁判所は、世論になびく風潮があることは以前から指摘されており、対馬の銅像の返還訴訟でも、日本側の敗訴といった結果となったことはご記憶の方もいらっしゃるかと思いますし、パククネ大統領をめぐる裁判所の対応も世論に配慮した特別対応などもあり、韓国国内からも批判されるケースもあります。
いずれにせよ、こういった人治主義的な悪例の一つとして、2012年に最高裁で請求権を認める判決が出てしまっています。
ムン大統領の発言
そして、この裁判を引き合いに出しながら発言したのが今回問題となっているムン大統領の発言です。
ムン大統領は
「両国間での合意が、一人一人の権利を侵害することはできない。両国間の合意があるにもかかわらず、徴用された強制徴用者個人が三菱などをはじめとする企業に対して有する民事的権利はそのまま残っている、というのが韓国の憲法裁判所や韓国大法院の判例だ。政府はそのような立場から、過去の歴史問題に取り組んでいる」
とのべ、最高裁の判断している、請求権が消滅していないということを政府も認めることと等しい発言を行い、従来の政府見解をひっくり返しました。
朝日新聞ですら「危うさ」指摘
これには読売、産経などが一面で批判したのと同時に、毎日は総合面で、そして、朝日新聞ですら社説で「危うさを感じざるをえない」として批判しました。
そして、外務省も韓国に対して、1965年に解決した問題だとして、抗議しています。
このように、日本としては当然受け入れられるはずがありませんし、1965年以来の政府見解を突然ひっくり返す発言をする、いわゆる「ムービングゴールポスト」とも取れる発言を行う韓国に対して、戸惑いや批判の声が上がっています。
連携が必要な時に、、
そして、何より北朝鮮問題に対して、日米韓の連携が不可欠な時に、こういった発言を行うムン大統領の火種を生むような行動には呆れる他ありません。
この徴用工問題に関連して、ムン大統領は 「南北共同調査」を行うことまで発言し、北朝鮮に対して融和に偏るメッセージまで発しています。
さらに、ムン大統領は「日本の指導者の勇気ある姿勢が必要だ」とも述べていますが、そっくりそのままお返したくなるような発言です。
当選前から、日韓合意などを含めて、反日の色が濃いと言われてきたムン大統領ですが、徴用工問題に関してひっくり返すというのは衝撃的です。
何より、2005年当時の公式見解の一員でもあるムン大統領の発言としてあまりに軽々すぎると断ずる他ありません。
さらには、1965年当時、日本が徴用工を始め、請求権に関して個別に対応すると述べたのに対して、韓国政府が対応するから政府にお金を一括でと述べたのは韓国政府です。
いまさら請求権に対してむし返すことの、不毛さを認識していただきたく思います。
終わりに
ということで徴用工問題に関して見てきました。
ご覧の通り、今回の件に関しては左派からも戸惑いが出るほどの唐突かつぶっ飛んだ主張ですから、日本は毅然と自らの立場を主張しなければなりません。
何より、韓国政府に置かれても、北朝鮮問題が緊迫する中、世論になびいたのか知りませんが、反日的発言で、北朝鮮との融和を図ろうとする姿勢は、改めていただかなければなりません。
戦後70年経っても、ゴールポストを動かし続け、日本政府に対する外交カードとして利用し続けようとする姿勢を考え直していただきたいところです。
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