天皇陛下のご発言からちょうど1年が経過しました。
譲位の意向を強くにじませる衝撃的内容で、それを受けて有識者会議、議長副議長の取りまとめなどによって、国会で「天皇の退位等に関する特措法」が成立したことは、記憶に新しいことでしょう。
そして、ご譲位をめぐる政府の対応は遅々として進まない状況となっています。
陛下のご譲位は200年ぶりの凄まじい意義を持つ出来事であると同時に、改元を通じて国民生活にも少なからず影響が出てくることは間違いありません。
そこで、現在の陛下のご譲位をめぐる状況について、そして朝日新聞の驚きの社説についても見ておきたいと思います。
政権体力低下で進まない準備
お言葉から一年が経過しても、ご譲位のスケージュールや準備に関しては停滞感が見受けられます。
このことには安倍政権の支持率の低下も非常に大きく関わっていることでしょう。
森友学園問題、加計学園問題、日報問題を通じて安倍政権の支持率は数ヶ月前では考えられない状況となっています。
その結果として、政権の体力が失われたことで停滞しているありようを見ると、200年ぶりのご譲位の優先順位が下がっていると考えざるをえません。
今夏にご譲位の時期などの関しての会議として予定されていた皇室会議も、スケジュールが早まった内閣改造の影響で、開催の見通しが立っていません。
このような状況で、陛下のご譲位後のお住まいや、ご譲位の時期、そしてご譲位に伴う予算措置に関しても宙ぶらりんの状態となっています。
一刻も早くそのめどを立てるべく政府には努力をお願いしたいところです。
改元時期
予算措置や、お住まいについては国民が直接の影響を受けることは考えにくいでしょう。
しかしながら、改元時期に関しては国民的な関心の高いものであると思われます。
もちろん国民生活に直に影響してくる内容ですからね。
現在考えられているのは、平成31年の元日に行うか、平成31年の4月に行うかという案です。
元日は当然年の初めで平成が30年で終わることにもなりますが、国民生活的には都合が良いと言えるかもしれません。
平成31年4月に関しては、年度始めということで想定されています。
本来であれば、元日に行われるのが望ましいというのが概ねの意見だと思いますが、4月が検討されているのは宮中祭祀をはじめとして皇室行事の問題です。
年始には祝賀行事、宮中祭祀などをはじめとして、皇室の行事が非常に忙しく、それにご譲位の儀式まで加わることは非常に負担が大きいということで、宮内庁をはじめ反対する意見も出てきているために、4月改元案が出てきているわけです。
朝日新聞の社説での主張
これに関して、朝日新聞は8月7日社説において、持論を展開しています。
自社の世論調査で元日の改元を望む国民が70パーセントという事実を受けて、宮中祭祀が多忙であっても優先すべきは市民の日々の生活であり、世論に反対する措置をとる必要はないとしています。
つまり、皇室の忙しさは市民には関係ないから、元日に改元すべきだという主張です。
ここで問いたいのは、今回のご譲位は何のためのものかということです。
今回のご譲位は、陛下がお言葉で体調などをご理由に、ご譲位の意思を強くにじませ、それを受けて国民が陛下の思いに共感をした流れであったはずです。
国民の生活に都合のいいようにキリよく改元をするためではありません。
皇室の負担の拡大をめぐってご譲位をという流れに対して、皇室の忙しさは国民には関係ないのだから、そんなの理由にならないというのは、流れに反してはいないでしょうか。
皇室の事情などが関係ないというのであれば、今回のご譲位を否定することにもなりかねません。
そして何より、天皇としての最も大事な仕事は、国民の平穏と安寧を祈り続ける宮中祭祀にあります。
これらを踏まえても、改元は市民のためにやるべきで、皇室の事情、宮中祭祀は関係ないと断ずる朝日新聞の見解は非常に乱暴ではないでしょうか。
終わりに
ということで、停滞する政府の姿勢と、朝日新聞の乱暴な社説について見てきました。
いずれにせよ、改元の時期については、来年の夏までには発表されるということです。
政府としましては、当然内政外政ともに難解な諸課題が山積する中ではありますが、ご譲位の時期に関してましては、パブコメの募集もなく、政府にその責任が一任されていると言ってもいいわけですから、その任を果たすべく迅速に動いていただきたいと思います。
夏に開かれる皇室会議の開催の時期についても早急に調整されることを強く望みます。
そして、朝日新聞の社説は、陛下のご事情を慮った、皇室の事情を慮った結果のご譲位であることを忘れ、改元の時期に宮中祭祀などの皇室の事情は関係なく、大事なのは市民の生活だというのは、本質を見誤っていると言わざるをえません。
これに関しても、皆様のご意見を様々ご頂戴したく存じます。
いずれにせよ、ご譲位、改元がつつがなく執り行われることを願っております。
関連記事