最終更新日9月3日
(追記)
前原氏の公式ツイッターにリツイートされました。
だからなんだと思われるかもしれませんが、一応載せておきます。
(追記終わり)
さぁいよいよ民進党の代表選挙が始まりました。
世間からの注目度が必ずしも高いとは言えませんが、支持率低迷しているとはいえ、野党第1党の党首を決める戦いですから、政界の動きとしては非常に大きなものでしょう。
そこで、今回は民進党代表選挙を巡って、前原誠司氏の経済政策、ひいては民進党が目指す経済政策について見ていこうかと思います。
代表選挙で優勢と伝えられる前原誠司氏はAll for Allを掲げて戦っておられます。
経済政策もそのAll for Allの精神に基づく、税負担を上げて再分配を重視するという政策です。
彼の政策は慶應義塾大学教授の井出栄策さんの影響を非常に強く受けたものです。
そして、枝野幸男氏もこの井出教授と非常に深い関係にあり、前原氏と経済政策に関しては大きく違わないという意見を表明されています。
ですから、前原氏の目指す経済政策、すなわち民進党の目指す経済政策ということもできるでしょう。
ただ、彼らの経済政策がなんなのか、アピール力が足りないのか、全く国民には見えていないし、知らない方も多いでしょう。
そこで、今回は、前原誠司氏のAll for Allの経済政策がどういったものなのかを、ざっくりと解説し、民進党が目指す経済政策についてお伝えしようかと思います。
私は全く民進党の支持者とかではありませんが、各政党、各議員の考えを把握しておくのは非常に重要なことです。
誰それがいっているから、どの党が言っているからダメと頭ごなしな評価は無意味ですからね。
なお今回はあくまで、前原氏の理念や考えについて伝えることに専念し、私がそれをどう評価するかは極力排除していこうかと思います。
では、見ていきましょう。
前原氏の経済政策の理念
まず、前原氏の理念的なところから見ていきたいと思います。
前原氏は、すべての人びとの基本的な生活ニーズを満たす「尊厳ある生活保障」を実現することを目標とし、教育・社会福祉・年金「あらゆる生活者の不安を解消する」ことを目指すということを理念として掲げられています。
前原氏が掲げている「All for All」からもわかる通り、痛みも喜びも分かち合う、支え合いということを重要視し、再分配の強化を目指しています。
そして
All for All みんなが応分の負担をし、みんなが受益者になるとして*2
- 中福祉中負担
- 世代間の分断をなくす
- 低所得者と高所得者の分断をなくす
ということをポイントとして挙げられています。
再分配の強化
前原氏の経済政策で一番大きく、根幹にあるのが再分配の強化でしょう。
前原氏は、再分配政策をする前の貧困率と分配後の貧困率が、ドイツは8.1から3.3に、フランスでは18.0から6.7に大幅に改善しているのもかかわらず、日本では13.5から12.9とほとんど改善されていないことを指摘します。
このことから、日本の再分配政策はうまくいっていない、改善する必要があるとはおっしゃります。
そしてこの原因は、若い世代に対する再分配の冷たさにあることも指摘します。
これは上述の2の世代間の分断をなくすという考えに通じてくるものです。
これを改善するために、老人の分配先を減らすとなると、高齢者が反発されるので、みんなが負担をして、みんなが受益する社会を目指そうといいます。
そして、社会に不安がなくなることで、過剰貯蓄に回るお金が消費に周り、経済が好循環するボトムアップの経済を目指せるとも語っています。
社会保障政策の強化
これは再分配と同義ですが、具体的に前原氏が示されているものを見ておきたいと思います。
例えば現役世代に向けては、教育の無償化、安心して子供を生み育てられる社会の実現、介護士・保育士の処遇改善などを挙げられています。
そして、年金に関しては、基礎年金をマクロ経済スライドから外すことで、減らない基礎年金を実現するとされています。
マクロ経済スライドは、簡単にいえば、経済情勢によって年金の額を左右させるという自民党が現在導入しているもので、これは、年金支給年齢を引き上げ、年金の額を減らすためのものだとして、前原氏は批判しているわけです。
成長・行革には限界がある
そして、これを成し遂げるために当然指摘されるのが財源の問題です。
この点に関して、前原氏は経済の成長や、行革による無駄の見直しによる、財源の創出には限界があるとも指摘します。
まずは成長ですが、成長が支える所得増がすべての矛盾を解決するという「成功の記憶」にはもう頼れないとおっしゃいます。
さらに大きな政府が成長を阻害し、小さな政府が成長を支えるというのは、間違いであるとも指摘します。
すなわち、成長を前提とした、社会保障政策の充実には無理や限界があるとして、成長依存から脱却するとされています。
そして、行革や議員定数削減と言った改革も行っていくが、民主党政権の反省として、支出の削減による財政の捻出ということは、非常に限定的であるということは、過去の反省として捉えているとおっしゃり、これらには限界があるともおっしゃいます。
国民負担率
そうすると、財源をどうするのかというのが、いっそう問題となってきます。
前原氏はこの問題に関連して、国民負担率からとらえると日本の税負担は大きくないと指摘します。
国民負担率とは、国民所得に対する国民全体の租税負担と社会保障負担の合計額の比率のことです。*3
ヨーロッパの中でも小さな政府と言われるイギリスの国民負担率は45.9パーセント、ドイツは52.5パーセント、日本に比べて人口が半分ほどのフランスは68.2パーセントです。
そこと比較した時に、日本の国民負担率42.5パーセントというのは、小負担とも言えることを指摘します。
こういったことを念頭に、高負担をいきなりめざすのではなく、主要先進国で平均的な税負担であるドイツと軽い税負担であるイギリスの間くらいの国民負担を軸に、今後の負担のあり方を議論していくとして、段階的に50パーセントの国民負担率を目指すとされています。
まさに上述の通り、中福祉中負担ということです。
具体的な財源
国民負担率を引き上げていく考えということは、上で述べましたが、具体的にどの税源で成し遂げるのかも重要です。
前原氏は総合的に考えるとおっしゃってはいますが、全世代の負担という意味で消費税を主眼で考えられている趣旨の発言をされています。
消費税増税を回避して他の財源に頼れば、サラリーマン、中小企業への負担増となり、前原氏の掲げるAll for Allの理念に反するということです。
そして、低所得者層対策を考えながら、法人税、相続税などのベストミックスを目指すとのことです。
前原氏と枝野氏の大きな違い
ここまで述べてきた、前原氏の経済政策に関しては、枝野氏もそう違わない理念を持っておられます。
枝野氏も前原氏の経済政策のブレーン井出教授と近しいということもありますから。
すなわち、民進党の経済政策として、支えあう共生社会という理念を掲げる上述のような政策ということは一致しているとのことです。
この二人で経済政策的に何が大きく違うのかといえば、消費増税のタイミングに関する考え方です。*4
枝野氏は、将来的な増税では一致するものの、今現状での消費税増税は、日本経済を麻痺させることになるとして、反対されています。
現在の経済状況では反緊縮であると明言されています。
しかし、前原氏は現在の経済状況であれば、消費税は増税すべきだとしています。
この点が非常に大きな考えの違いと言えるでしょう。
終わりに
ということで前原氏のひいては民進党の目指す経済政策についてまとめてきました。
簡単にまとめれば、
- 再分配の強化
- 若年層への分配を強める
- 社会保障の充実
- 生活を安心なものにすることで、過剰貯蓄が減り消費が循環する
- 成長・行革には限界がある
- 今の日本の負担は少ないので、引き上げる
- 主な財源は共に負担の消費税
- 現在の経済状況であれば消費税はあげる(前原氏)
こういったところですかね。
もちろん細かく見ていけばもっと深堀できますが、今回はザックリということで。
現在の金融緩和、規制緩和による、経済成長政策「アベノミクス」を否定し、格差是正、社会保障の充実といった、共生社会を目指し、より大きな政府を目指していくといったところです。
アベノミクスを掲げる自民党との差別化は必要不可欠ですから、差別化という意味では成功しているかもしれません。
ということで、前原氏ひいては民進党の経済政策をどう評価するかの判断の一助になれば幸いです。
これらの政策をどう評価するかについて、ブックマーク、コメントなどでご意見いただけたら幸いです。
なお、今回の記事は、前原誠司氏のホームページや過去の発言をもとにしていますが、これらの経済政策に関する説明で大きく間違ってるポイントなどがございましたら、ご指摘のほどお願いいたします。
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