7月4日、午前9時40分ごろ、北朝鮮がミサイルを発射しました。
ミサイルは約40分間飛翔したのち、日本のEEZに落下したものとみられています。
このニュースをみて「また北朝鮮がミサイルを発射したのか」と思われる方も、いらっしゃるかもしれませんが、今回のミサイル発射は、いままでとはその意味合いが違います。
またその後北朝鮮は15時30分に特別重大報道を行いました。
そこで、今回のミサイルのもつ意味、北朝鮮の報道について見ていきたいと思います。
進化する北朝鮮のミサイル
まず今回のミサイルは、およそ40分間飛翔したものとみられています。
パッと聴いただけでも、「ながっ」と思われるのではないでしょうか。
しかし、落下した地点は今までと同じ日本のEEZの境界線付近なわけです。
つまり、高度を上げて再度大気圏突入するロフテッド軌道で発射したものと見られています。
ロフテッド軌道は写真のような感じで、通常軌道よりも非常に早いスピードで落ちてくることから、迎撃が難しいとされています。
そして、いままでを大幅に塗り替える40分間の飛翔、2500キロを超える高度など北朝鮮のミサイル技術の向上、そして脅威の拡大を意味します。
今回重要なポイントとしては、では今回のミサイルをロフテッド軌道でなく、通常軌道で発射すればどうなるのかということです。
ICBMかどうか レッドラインを超えるか
そして、飛距離という意味でも非常に重要となってくるのが、発射されたミサイルの性質です。
もし仮に、今回発射されたミサイルがICBM(大陸間弾道ミサイル)であったとするならば、もし仮にアメリカに届く飛距離のものであるならば、その意味合いは今までとは全く異なってきます。
以前の記事でも書きましたが、北朝鮮がアメリカの真の脅威となる、つまりアメリカのレッドラインを超える行為として
- 核実験を行う
- ICBMの実験を行い、完成させる
ということが挙げられます。
北朝鮮が今年9回目のミサイル発射 ミサイル発射をやめない理由とは!? 止まらない挑発 - 桜咲き誇れ
まぁつまり、アメリカ本土に北朝鮮の攻撃が届くようになり、北朝鮮の脅威がアメリカ本土に及ぶものになることは、アメリカとしては許されないということです。
北朝鮮もトランプ大統領になって以来、アメリカ、中国の逆鱗に触れないように、核実験、ICBMの実験は控えてきました。
ということで、今回のミサイルがICBMであるとするならば、今までとは格の違うアメリカに対する挑発行為ということになります。
重大特別報道
そして、15時30分に、北朝鮮は重大特別報道を行いました。
北朝鮮が特別重大報道「ICBM発射実験に初成功」 | NHKニュース
そこで「ICBMの発射実験に成功した」ことを発表しました。
発表によると今回のミサイルの名前は「火星14号」とのことです。
また北朝鮮は「核兵器とともに、世界のどの地域も打撃することのできる最強のICBMを保有した堂々たる核強国として米国の核戦争威嚇・恐喝を根源的に終息させるだろう」と主張しました。
北朝鮮がICBMの発射実験を行ったと発表したのは初めてのことです。
現在詳細な分析は各国で行われている途中ですが、北朝鮮曰くICBMの発射に成功したということで、北朝鮮が、アメリカのレッドラインを超えるICBMの発射実験を行い成功したことを発表した意味というものは非常に大きいわけです。
アメリカがどう反応するか
ここで問われるのは、アメリカのトランプ大統領の反応ということになろうかと思います。
アメリカからすればレッドラインと言えるICBMの発射成功をどうどうと発表されたのですから、何らかの措置にでなければなりません。
オバマ大統領時代、シリアに対してレッドライン(化学兵器使用)を宣言しながら、そのレッドラインを超えてきたシリアに対して、軍事行動を見送ったわけです。
こういった軟弱な態度によって、世界からオバマはレッドラインを超えても行動しないということを見透かされ、力の空白を突く形でイスラム国の台頭、中国の南シナ海進出、北朝鮮の核実験など様々なことが行われたわけです。
その後任となったトランプ大統領は、オバマとは違い、レッドラインを超えたシリアに対して弾道ミサイルを発射して、レッドラインを越えればアメリカは動くという姿勢を示してきたわけです。
こうした姿勢によって、4月に行われる予定であった、北朝鮮は核実験を見送らざるをえない状況になったわけです。
北朝鮮に対する軍事行動の難しさ
となると、今回のICBMに対してもアメリカとしては、何らかの強硬姿勢を示さなければならないわけです。
いわば、北朝鮮にアメリカは本当に動けるのか試されている、ジャブを打たれていると言った感じなわけです。
しかしながら、北朝鮮に対して軍事行動をとることは、シリアにミサイルを発射することとは全く意味が異なります。
北朝鮮を攻撃すれば、反撃を受けることは必至です。
核攻撃を恐れるという意味もありますが、一番大きいのは国境周辺に並べられている、ソウルに向けられた無数の砲台であります。
北朝鮮が、よくソウルを火の海にするといいますが、具体的にはソウルを砲撃するということです。
この攻撃を受ければ、100万人以上の被害を受けるという予想がなされています。
となると、韓国としてはアメリカが北朝鮮に攻撃して、ソウルが攻撃されることは防ぎたいわけです。
さらに、韓国には米軍も在留しています。
アメリカ世論も、アメリカ人が数多く血を流しかねない行動を支持するかは疑問が残るところです。
こういった事情から、過去にクリントン政権が、北朝鮮の攻撃を諦めたという過去もあります。
北朝鮮に軍事行動を行うことで韓国、米国に生じる被害は甚大です。
このような状況の中で、北朝鮮を攻撃するというのは、シリアを攻撃するのとは全くレベルの違うことなのです。
ということで、北朝鮮に対して軍事行動をとるということは非常に困難と言わざるをえません。
となると、北朝鮮に対する、さらなる独自制裁を課していくということになるでしょうが、果たして北朝鮮に本当に効果的かは疑問であります。
中国の面子
今回のICBM実験は中国としても面子が丸つぶれです。
トランプ大統領の圧力によって、習近平は北朝鮮にレッドラインを超えないよう圧力、制裁をかけてきました。
ただし、その圧力は、アメリカの期待するほどのものではありませんでした。
しかしながら、一応ICBM、核実験というレッドラインはやらせていないということでアメリカに対する面目を保ってきたわけです。
しかし、アメリカとしては中国の姿勢が不十分であると判断し、中国に圧力を与えるべく、中国の銀行に対して制裁をかけた直後のICBMの発射ということになりました。
この件を受けて、今後アメリカからさらに北朝鮮に対する圧力、制裁を強めるように、中国または中国企業に対する制裁、圧力も強まることも予測されます。
これは中国としても頭を抱える問題でしょう。
終わりに
このように、今回のミサイル発射は今までとはレベルが違うということです。
こういった脅威のレベルをあげながら、北朝鮮はアメリカの足元を見ながらチキンレースをしているわけです。
まさに抑止力を背景にギリギリの挑発を行おうとしているわけです。
そういった意味では金正恩はやり手とも言えるかもしれません
アメリカが今回のICBMと見られるミサイル発射を受けて、効果的な対応が取れなければ、北朝鮮に、アメリカは攻撃できないと足元を見られることとなり、北朝鮮の挑発はますます増長する結果になることが予測されます。
具体的には、さらなるICBM実験、そして核実験です。
日本としても、内政も当然大事ですが、防衛に関してもさらなる対応を行うことを望みます。
憲法改正、策源地攻撃能力の保有、北朝鮮に対する厳密な制裁をかけるための法整備など、やれることはたくさんあります。
国会でも、建設的な議論が行われることを望みます。
(関連記事)