昨日の衆議院本会議で、刑法改正案が審議入りしました。
その内容は、性犯罪の厳罰化や、強姦罪の名称を「強制性交等罪」とするなどの、法案改正なのですが、いまいち何が変わるのかわからないという方も多いと思います。
あらかじめ言っておきますが、性犯罪という性質上、若干性的な表現が混じっています。
苦手な方はお気をつけください。
まぁそんな大したことないですがw
(追記)
こちらの記事は刑法改正以前の記事ですが、内容は変わっておらず、施行された刑法改正のポイントを書いていますので、ぜひご覧ください。
- 110年ぶりに変わる
- そもそも強姦罪とは
- 女性器への挿入のみの処罰から肛門性交、口腔性交も含めた処罰へ
- 男性も被害者に、女性も加害者に
- 暴行や脅迫を用いない強姦も対象に
- 親告罪から非親告罪に
- 厳罰化
- まとめ
110年ぶりに変わる
現行の刑法は、1907年に成立して以来、性犯罪については、110年間大改正されてきませんでした。
つまり、性犯罪については1907年の価値観で成立したもので、現在の価値観とはあってない部分も出てきてたわけです。
110年前には、強姦というのは家父長的な背景から血統を乱すという意味で、妊娠の恐れがある行為のみについて適用されてきました。
さらに110年前にはLGBTといった概念や、男が襲われるという概念もなかったわけです。
こういった価値観の変化に対応するもので、野党からも今回の刑法改正には概ね賛意が示されているものと思います。(細かい部分は別ですが)
それでは具体的な内容について、見ていきたいと思います。
そもそも強姦罪とは
そもそも強姦罪っていうのがなんなのか、わかっているようでわかってない人も多いと思いますので、強姦罪とはなんぞやということにも触れておきます。
暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
つまり、13歳未満の女子に姦淫した場合は、その手段を問わずにアウト。
13歳以上の場合には、「暴行•脅迫」を用いて姦淫した場合のみ強姦罪が適用されるわけです。
ここでいう、姦淫とは男性器を女性器に挿入することです。
女性器への挿入のみの処罰から肛門性交、口腔性交も含めた処罰へ
上でも述べましたが、110年前の家父長制のものとでは、強姦は妊娠の恐れのある、陰茎の女性器への挿入のみだったわけです。
しかしながら、現在では、女性器への挿入のみが強姦になることを逆に利用して、強制わいせつ罪という強姦よりも軽い罪になる、肛門性交、口腔性交が行われるということもありました。
ただ、肛門性交、口腔性交であれば、被害者に与える心身へのダメージが女性器への挿入と比較して軽いかと言われればそういったこともなく、抜け穴となってしまっている現状が、問題視されていました。
そこで、今回の改正によって、これらを一括して強制性交等として、同じ犯罪として扱えるようにできるようになるわけです。
男性も被害者に、女性も加害者に
この改正が行われることによって、女性器への挿入を対象としていたため、女性への性犯罪しか強姦として扱われなかった現状が改められ、男性に対する性犯罪も同様にさばけるようになったわけです。
現在は、男性への性被害も増えており、その心身への被害は女性と比較しても軽いものではないと言われています。
いままでは、単独犯の場合男性のみしか加害者になりえず、女性が加害者となるのは、その手助け等を行った場合に限られていました。
しかし今回の改正で、女性も加害者として認められるようになりました。
暴行や脅迫を用いない強姦も対象に
現行の、強姦罪ではその要件に、暴行脅迫を行われていることが必要となります。
つまり、暴行脅迫を行わずに、強姦されたとすれば、強姦として犯罪を訴えることができないわけです。
これの最たる例が、親からの性被害です。
親娘という関係を利用して、娘が反抗できないことがわかっていながら、その影響力を用いて、性交を強制するというのは非常に悪質です。
しかしながら、ここに暴行や脅迫はないわけで、強姦としては扱われなかったわけです。
そこで今回の改正で、「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」が新設されることになりました。
この罪では、監護者(親など)が影響力を背景に行った性交等は、被害者が抵抗したかどうかとは関係なく罪に問われることとなります。
親告罪から非親告罪に
今までの、刑法では強姦罪は親告罪でした。
親告罪とは、告訴がなければ控訴を提起できない罪のことです。
つまり、被害者からの告訴がなければ、起訴できないということです。
これは被害者のプライバシーに配慮するため、被害者自身で告訴するか決められるものだったわけですが、現在では、被害者がその判断をすることこそが、精神的負担となっているわけです。
さらに、家庭内での性犯罪では、父親をかばうために家庭内で告訴しないことが決められてしまい、被害者の救済に繋がらないという事態もありました。
そこで、非親告罪にして、被害者の精神的負担や、被害を受けたものの泣き寝入りといった事態を減らそうという意味で非親告罪に改正されるということです。
厳罰化
今回の改正によって、強姦罪が「強制性交等罪」になるわけですが、それと同時に量刑も重くなります。
いままで、強姦罪は懲役3年以上でしたが、今回の改正によって、殺人罪の下限と同じ、懲役5年以上に引き上げられます。
同時に、強姦致死傷罪も「強姦性交等致死傷罪」にかわり、量刑も無期または懲役5年以上か無期または懲役6年以上に変わります。
魂の殺人とも言われる、強姦罪ですから殺人罪と下限を同じくして、厳罰化することは必要でしょう。
まとめ
ということで今回の改正のポイントは、
- 男性器の女性器への挿入以外も、「性交等」として強制性交等罪に
- 男女ともに加害者、被害者に
- 監護者(親など)による犯行は、「暴行脅迫」が用いられなくても罪に
- 親告罪から非親告罪に
- 厳罰化
の5ポイントだと思います。
特に一番上の、肛門性交、口腔性交云々のポイントは、新聞を読んでも書かれていなかったんで、重要なポイントですが知られにくいかもしれません。
まぁ確かに全国紙で書くのはいろいろ難しいのかもしれませんね。
会期末が18日と迫る中で、この改正が成立するかは微妙なラインです。
何としても、成立していただきたいところです。
(追記)
無事成立し、施行されました。
直接は関係ないですが、こちらの記事もご覧いただければ幸いです。